父 性

あんまり泣くと、
干からびるよ。

唇乾いてるね。
そう言って無造作にキスしてくる貴方。
でも欲しいのは君じゃない。だけど流される様に時間に身を委ねてみた。
君が、変わってゆく。
[限り有る"私"という匣の中で]
妄想と想像と空想を偶然にも虚像に重ねてみる。ピントを合わせるのは慣れているから―
現実が、眼を覚ます。
私が困惑する。
僕が躊躇することを貴女は平然とやってのけた。ほら、僕からすれば君が最低じゃないか。
あたしね、から始まる発言の内、君の睫が朝露を纏う木の葉の様に踊る時は過去の悲しい話を始める時だ。
僕は躊躇する。
私が混乱することを貴方は冷静に理解してみせる。ほら、私からすれば君が天才じゃないか。
そういえば携帯電話が見当たらない。
嗚呼そうだった、君が優しくぼくから奪ったんだ。
新しいこと、見えてくるかもよ。
ほら、一日煙草をやめると次の日の寝起きに吸う煙草は格別でしょ?
「確かに。」
―何を言い返しても言い返してくれるから僕は自分がまともなんだとやっと思えたんだ。
セックスの朝、朝のセックス。
布団の裏っかわに黴が生えていた。
僕の指先と髪の毛から彼女のにおいがした。
[これで幸せだって言うんだから"君は女"みたいだよね]
彼女の指先と僕の指先を見比べても、何ら変わりは無かった。
もしかしたら僕は
[女として生まれてきても良かったのかもしれない。]
彼女は僕の足の指を一本ずつ丁寧に舐め、性器を根元まで口に入れた。
僕の射精は彼女が支配した。
君に殺されるなら
何とも思わなくて済むかも知れない。
ほら、痛みとか苦痛だとか変な窮屈を感じずに済むかもって話。
時には君の話をしてみる。
何故、何故、何故と子どもみたいにすべてが新しくてすべてに疑問を感じてしまう様な君は、
一ヶ所だけ、凍った部分があった。
毎週末過呼吸になってしまう、涙が止まらないから出来れば、ううん出来たらでいいの。一緒に居て?
彼女が素直になる時だけ僕は優しさを保てたし、この人の側に居て柄にもなく守り切れる様な気になった。
私が弱い時だけ、自惚れていてよ。
[マゾの癖に生意気だ]
嘲笑する様な視線にちゃんとした感謝が反射して見えた。
左腕に植えた★と、バーコードの刺青。
彼女は\826らしい。
[毎日値段が変わる]
その点、僕は彼女とただで交わっている。
彼女は僕が死んだら自分も死ぬらしい。
僕は、彼女が死んでも泣くだけだ。